「みんなの癒し石井ダム」
土木と聞くと一番に思い浮かぶのは「ダム」の私。
今回はそんな私が以前から行ってみたかった「石井ダム」を旅してきました。
ここは平成20年(2008年)に新湊川水系の洪水対策として烏原渓谷に建設された自然調節方式を採用した重力式コンクリートダム。
自然に洪水の時の放流量を調節してくれるのでゲートがなく人が操作しなくても大丈夫な作りになっています。
「ゲートがない」=「ゲートレス」のダムを業界では「坊主ダム」と呼ぶそうです。
ダム用語を一つ覚えたところで、石井ダム目指して出発〜!
石井ダムは神戸電鉄「鈴蘭台駅」から約30分のところにあります。
歩いている途中にも見所が!!
一見、岩山にも見えるのですが、なんとこれは石井ダムを建設する際に出た土砂なんです。
さらに進むと橋の途中に岩肌に南無阿弥陀仏と書かれているのを発見!
すごくくっきりした文字なので一見新しくも見えるのですが、なんとこれが彫られたのは1861〜1863年で、なんと幕末の頃!
小部村にあった極楽寺の修誉蹄善和尚が掘ったもので、一文字の大きさはなんと1.2メートルもあるんだそう。
当時このあたりは物騒だったこともあり人々の安全を願って彫られたと言われています。
岩が見える橋からは石井ダムも見ることができます。
遠くからでも迫力があってかっこいいのがわかります。
ダム湖を近くで見られる展望スペースもあります。
早速降りてみるとダム湖のキワキワまで近づける!
ダム湖をうっとり眺めていると端の方にコンクリートの遺構を発見しました。
なんとこれは石井ダムを建設する際に付け替えられた神戸電鉄の橋脚跡!
昔はこのあたりに電車が走っていたんですね。
現在、神戸電鉄はダム湖に平行してトンネルの中を走り、ダムの直下流で地表に出ています。車窓から見た石井ダムも絶景とのこと♪ちょっと違った角度からダムを見たい方にはオススメです!
ダム湖を見た後はダム天端へ。
とても広々した空間で円形の花壇もある癒し空間!
展望台にもなっているのでダムを上から見ることができます。
天端の中間地点には小さな入り口。
この中には水位計が置かれていました。
周りの景色を楽しんでいると何かトンネルのようなものが、、、。
これもダムが出来る前に使っていた神戸電鉄の廃線跡のトンネルでした!
そしてこのダムには全国的に珍しい「レクリエーション多目的ダム」で多目的ホールがあるんです。
今日は特別にダムの内部も紹介します!!
エレベーターに乗って下へ降りていきます。
ダムの中にあるエレベーターというだけでドキドキ!
思いの外速い速度で多目的ホールの階に到着。
コンクリート打ちっ放しの空間に神戸市内で発掘された土器など様々な埋蔵品が展示されている他、壁には阪神大水害の際の写真や断面土層転写、縄文人の足跡の平面土層転写なども展示されています。
阪神大水害の際の写真
阪神大水害の際の断面土層転写
縄文人の足跡の平面土層転写。縄文人の足って大きかったんですね。
思わず自分の手と比べてしまいました。
壁に木枠で埋められた空間が!
これは今後エレベーターを設置する時にいつでも使えるように空けてある空間だそうです。
多目的ホールを後にさらに下に進むと謎の入り口を発見!
中に入れてもらうとそこにあったのはダム本体の変形量を測る機械。
この機械は、重力式コンクリートダムだと50m以上高さがあれば義務付けられているそうで、上からワイヤーで重りを吊るし、その動きによって変形量を測っています。
さらに奥にある小さくて丸い機械は地震の観測器。同じものがダムの上部にも設置されており、この二つを使って観測するそう。
さらに奥へと進むとトンネルのようなかっこいい空間が!
めちゃくちゃ急な階段で、途中に落下防止の柵が取り付けられています。
階段と通路の横には溝があり、溝から所々付いている蛇口のようなものから常に水が出ていました。
この設備がどんな役割をしているのかというと、
ダムの底にかかる圧力が過剰にならないように、圧力を抜いているんです!
地震があると、地面が揺すられて岩盤内の水の流れが変化する場合があり、このような変化もこの設備で知ることができます。
よ〜く見てみると水が出ているところと出ていないところがありました。
この出ていないところから水が出てくると岩盤内の水の流れが変化している可能性があるため、場合によっては調査をすることもあるとのこと。
ちなみに今まで水が出るところが変わったことはないそうです。
さらに進むと金網やゲートが青色に塗られている空間がありました。
金網の下を覗くと大きい底部放流管を発見。
ダムの中はいろんな設備があるんですね。
ダム内部を堪能した後は扉からダム下流側に出ました♪
青空にめちゃくちゃ映えます!
まるでお城のようでかっこいい!
他のダムにはないようなオシャレなデザイン。
これは構造物の魅力を高めるために「石井ダムデザイン検討委員会」を設置して考えたそうです。
さっそく階段を使って下に降りていきたいと思います!
この階段は誰でも使うことができ、ダムの面に沿って設置されているので間近でダムを見ることができるのが魅力的☆
階段を降りるごとに違った表情のダムを見ることができるのでものすごく楽しめます。
この階段、ダムを作った後に付けられたものに見えるのですが、実はこのダムを建設する際に一体で型をとって作られたそう。
「どんな型枠やったんやろ?」
階段の色が違うのは建設工事中に発生した汚泥(スラッジ)を使用した再生煉瓦を使用しているから。
他にもソーラーパネルを設置するなど環境にも配慮しているんですね。
テラスからの眺めも素敵です!
この下には車椅子の方も使用できるように幅の広いスロープも設置されています。
階段を下りきったところは花壇のある広場になっていてベンチに座って休憩することができます。
この場所から見たダムも素敵です!
ハイキングでは絶好の癒しスポットですね。
さらに進むと六甲縦走路で使用される橋が見えてきました。
ちなみにこの橋から見た石井ダムはこんな感じです。
夏は木が生い茂っているため、見るなら冬がオススメ!
最後に向かったのは管理所。
内部はこんな感じ!
テレメーター・放流警報操作卓などがあります。
他にもこの部屋には過去のデータがたくさん保管されているとのこと。
ベランダに出てダムを撮影しました!
ここから眺めるダムは最高にかっこいい!
さらに管理所にてダムカードをもらいました!
石井ダムの情報が書かれています。
欲しい方は是非、管理所へ!
ちなみに管理所は平日の9時から17時まで開いています。
(パトロールで無人の場合もあります)
土日祝日と年末年始は空いていないのでご注意ください。
石井ダムは外観も内部も周辺も見所が多くてあっという間に時間が過ぎてしまいました。
ダムを取材している間、地域の方々がハイキングやジョギングを楽しんでいる姿を多く見かけました。
「めっちゃ地元の人に愛されているダムなんやなぁ」
私も今回見学して石井ダムが大好きになりました!
皆様も是非、石井ダムに遊びに行ってみてくださいね!
<石井ダムのこれなぁに?>
☆ダム湖でよく見る浮きは何のためにあるの?
これは川から流れてくるゴミをキャッチするためのもので浮きの下には約1mの網が付いています
☆山の上にある鉄塔(写真右)は何のためにあるの?
これはダムの情報を土木事務所に中継する役割がある塔。
登山者も多いのでベンチが設置されています。
何年間も毎日登山されている方もいるんだとか。
<石井ダム情報>
住所:兵庫県神戸市北区山田町下谷上
河川名:新湊川水系烏原川
形式:重力式コンクリートダム
完成年:平成20年(2008年)
管理所:土日祝日と年末年始を除く平日の9時から17時まで(パトロールで無人の場合もあります)
お問い合わせ:兵庫県神戸県民センター土木事務所 河川課
(078−737−2157)