女子的土木散策レポート

Report

2019.11.22

巨大地下トンネル「塩屋谷川放水路」

今回は神戸市垂水区にある塩屋谷川放水路へ行ってきました。

塩屋谷川放水路は都市小河川改修事業の一貫で、昭和56年〜63年にかけて造られました。塩屋谷川の下流区間は民家が密集したエリアで、山陽電鉄やJR、 国道2号を横断するため、川幅を広げることができず、代わりにこの放水路が計画されました。

工事に使われたのはオーストリアで開発された「ナトム工法」という方法。
堀った部分に金属の支えを作り、コンクリートを吹き付けていきます。
そしてさらにロックボルトというボルトを岩盤に打ち込んでいくことによって山が持つ保持力を利用してトンネルが崩れるのを防いでいます。

工法1つにしても地盤の強さや土地によっていろんな方法があり、たくさん議論した結果、その場所に最も合った工法を使っているんですね。

塩屋北町に呑口、須磨浦公園西端に吐口があり、放水路の延長は1,705m、吞口部の延長は105m、吐口部延長は158mあります。

早速、兵庫県のヘルメットをかぶり、準備完了!

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いつ見ても「兵」の文字が可愛らしいので、このヘルメットを被るだけでテンションが上がります。

まず向かったのは吞口にある沈砂池と流木止めのスクリーンと呼ばれる、柱がずらりと並ぶ場所。

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実はここ、柱が並ぶ姿が圧巻で、いつか近くで見てみたい憧れの場所でした。

柱の上は点検用の通路になっています。
実際に歩いてみると思った以上に高くてびっくり。
下を見ると沈砂池が緑の絨毯のようでとっても綺麗。

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中心に私の影が小さく写っているのが見えますか?

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こちらは吞口部分。
とても大きくて今にも吸い込まれてしまいそうなぐらい迫力満点!
コンクリートの色も所々オレンジ色や黒くなっていてとてもいい味が出ています。

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ずらりと並ぶスクリーン。
これぞ機能美!
土木の現場を見るといつも思うのですが、この無駄のない機能を追求した美しさがたまりません。

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吞口上部からの眺め。
スクリーンが神殿の柱のように見えます。

見てみたい憧れの場所だったこともあり、どうしてもスクリーンを間近で見てみたい!
ということで早速、沈砂池へ降りて行くことに。

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膝丈ぐらいの植物がびっしり生えています。
個人的にコンクリートと植物の組み合わせが大好きで、植物の成長具合によって時間の流れが感じられるのが魅力的だと思っています。

沈砂池には4,600㎡の土砂が推積できます。
スクリーン柱の間隔は2m。
これは大きな流木を溜めて、小さい流木はそのまま流せる設計なんだそう。
ちなみに小さい流木や塵はトンネルの断面が大きいので多少流れ込んでも閉塞の恐れはありません。

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流木や塵はこの斜面から流れてきます。

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念願のスクリーン柱を触ってみることに。
コンクリート独特のひんやりした触り心地。
とても背が高くて、近づいてみた方が「大きい流木は絶対通さない!」と言って堂々と立っているように見えます。
とても頼もしい!とても安心感があります。
沈砂池を後にして、吞口から吐口へ向けて歩くことに!

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吞口はとても大きくて、小さい流木が多少流れ込んでも閉塞の恐れがないことがよくわかります。
流れる水は少ないのに「ゴゴゴゴゴー!」と大きな音が聞こえてきそうな迫力です。

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内部から呑口をみると外にあるスクリーン柱が下の水面に映り込んでいました。
どんどん奥に進んでいきます。

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途中までは吞口からの光のおかげで内部がよく見えるのですが、一部カーブしている部分があるのでそこは真っ暗。ライトをつけないと全く前が見えません。
目が全く見えないと、不思議と今まで聞こえなかった水がちょろちょろと流れる音が聞こえてきます。

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放水路内にプレートが付いている場所を発見。
これは阪神淡路大震災の際に断層変位によってずれが生じた場所なんだそう。

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吞口から歩くこと約30分。
ついに吐口に到着しました!
こちらは天井が空いているのでとっても明るいです。

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光の関係なのか、流れる水がエメラルドグリーンでとっても綺麗。
川の水はこのトンネルをさらに抜けて海へと流れていきます。

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外に出てきました。
上にある道路のような場所は堺川。下が塩屋谷川。
2つの川が交差して流れている、他に類を見ない貴重な場所なんです!
私も川が交差する場所を生まれて初めて見ました。

この場所からさらにトンネルを抜けると須磨浦公園へと続いています。

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門の格子がダイヤの形をしていてとても凝った造りになっています。
ここからさらに海の方へ歩いていくと、最後の吐口がありました。

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今までの馬蹄型ではなく、長方形なのが特徴的。

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中の様子はこちら。
ここを通って水が海の方へ流れていきます。

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近年、日本各地で予想を上回る大規模な水害が多発しています。

私も昔、一度だけ地元が洪水になって町中浸水したことがありました。
当時は「川のせい」としか思っていませんでしたが、土木について知るにつれて日々災害に向けて調査や工事をして町の安全を守っている人たちがいることに気がつきました。

今回、実際に放水路を歩いて巡ってみると上には鉄道や道路があったり、民家が密集していたりと工事の大変さが改めてわかりました。
私自身も何かがあってから関心を持つのではなく、日頃から災害に備えたり、暮らしに関するいろんなことに興味を持ったりすることが大切なんじゃないかと思いました。

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