道路工事の現場に潜入!
皆さんは道路をどのように作っているか知っていますか?
私は修繕工事をしている場面は見たことがあるのですが、新しい道路を作っているところは見たことがありませんでした。
これは是非、見てみたい!ということで、今回は県道豊岡インター線・県道但馬空港線の道路工事の現場に潜入してきました。
現場に到着すると、早速ショベルカーがお出迎えしてくれました。
ちなみにこの未舗装区間も道路になるそうです。
今回ご案内してくださるのは土木事務所の方。
「よろしくお願いします!」
現在作っているのはこの地図の赤い線の所。平成26年に着工しました。
全長は約3キロ。
この道路を作ることによって、(仮称)豊岡ICと、豊岡の主要施設を直結することができます。
まずは病院。
救急搬送の時間が豊岡北部から約5分、南部からは約9分も短縮できるのだそう。
この9分はとても大きいので、完成したらいろんな人を救う道にもなるんですね。
そしてコウノトリ但馬空港とも直結します。
但馬空港は但馬−大阪(伊丹)間1日朝・夕2往復、計4便を運行しています。東京(羽田)までは伊丹での乗り継ぎとなりますが、最短約2時間で行けちゃいます。
ちなみに但馬空港はこちら。
ターミナルの横には戦後初の国産旅客機YS-11が展示されています。
8時半から18時までは見学することができるので、飛行機好きの方には是非見てもらいたいポイント。
1日1組限定の見学ツアーを申込むと、内部も見られます。
座席がずらりと並んでいます。
なかなかじっくり見ることがないので新鮮。
普段は見ることのできない操縦席も見ることができるので、お勧めです。
道路工事の目的を教えてもらった所で、いよいよ工事現場へ潜入!
ショベルカーのところまで戻ってきました!
この時だけかぶることのできる「兵」の文字が素敵なヘルメットを装着!
今回は豊岡モデルです。
ちなみに道路を作る工程はこちら。
①計画を立てる
②土地を購入する
③工事用の重機が通る道路を作る
④土を削って道路の高さまで盛る
⑤排水路を作る
⑥電線共同溝の升を埋める
⑦アスファルト舗装を行う
⑧完成
現在は③〜⑥番までの作業を行っています。
こちらは③の工事用の重機が通る道を作っている所。
砕石を敷き詰め、踏み固めています。
ショベルカーが動くたびに砂埃が舞っています。
ちなみに写真手前立っている「丁張り」と呼ばれる棒は、この高さまで土を盛るための印。
置かれる間隔は特に決まってはいませんが、カーブなど道の状況によって間隔が違うそうです。
この道はぐるっと左にカーブしています。
奥に法面が見えていますね。
よく見ると、カーブの奥の方が道路の位置が高いのですが、写真の丁張りの所まで土を盛ると、同じ高さになるそうです。
さらに進んでいくと、重機がたくさん。
黄色い重機が青空に映えていて、ずっと見ていられるぐらいかっこいいです。
ここでは④の土を削って道路の高さまで盛る作業をしています。
山を削った土は、作業速度の関係で、一度貯めておいて、ここから埋める場所までトラックで運んでいきます。
ショベルカーを使ってどんどん土を積んでいきます。
ドドドドー!!!!
すごい砂埃と共に大量の土が降ろされていきます。
このトラック、約8トンもの土を運ぶことができるそう。
この場所では一日約10往復して作業されています。
トラックが空になると大きな土山ができました。
道路工事では、山で出た土は山に返すということで、基本的に削った山の土を谷に埋めていき、道を平にしていきます。ちなみに道路は4層になっていて、一番下が路体、路床、路盤、そして一番上が私たちの目に触れるアスファルト舗装になっています。
重機で路体になる部分の土を押して均していきます。
この後に上から圧をかけて固めていきます。
圧をかける振動ローラーの中を見せていただきました!
乗る所はギザギザになっていて、滑りにくい仕様になっています。
靴底についた土も上手く取れそうですね。
運転席からの眺め。
いつもと違って高い目線なので、遠くまで見渡せます。
運転席に座らせていただきました。
シートが思ったよりもフカフカで、座り心地抜群です。
ハンドルの周りにはいろんなボタンがあります。
その中でも可愛いボタンを発見!
カメとウサギ!
カメはゆっくり、ウサギは早くなるそうです。
イラストになっているので、急いでいる時も、パッと見てわかりやすい工夫がされているのがいいですね。
上の方にあるこのボタンはラジオで、聴きながら作業ができるそう。
ちゃんとスピーカーも搭載されています。
ちなみに、この現場ですごいのが、最先端技術であるICT施工を導入していること。
ICT施工とは、国土交通省が推進するi-Constructionの一つで、衛星を使って位置情報を得ることによって、今まで断面を切るのに2人1組で確認しながら行っていた作業が一人でできる等、作業時間が4割も削減できるんだそう。
先ほど見つけた丁張りも作らずに済むため、職人さんからも作る手間が省けるのが大きいという声もあるとのこと。
全国でもまだ導入している所は少ないそうで、これからどんどん普及していくのではないでしょうか。
次に、下の写真のカーブになっている所へ移動します。
この時点でかなり道路感が出ていますね。
緩やかなカーブがとっても美しいです。
カーブの先では水が集まる升を作っていいました。
タンクのようなもので、この升を使って水をどんどん下へと流していきます。
ここは水の量が多いため、巨大な升になっていますが
普通の道だと、もう少し小さいそうです。
升がないと、水が散らばって流れてしまうため、100m間隔で設置されます。
完成するとここには常に水が流れてくるそうです。
これは升を固めている所。
現場で造っているなんて驚きですね。
木枠でガッチリと固められており、コンクリートの強度が出る28日後までこのまま固めます。
これは水路。近くでみると意外と大きいです。
升付近に大蛇のようなホースがありました。
このホースは水路や升が完成するまで、替わりに水を流すためのもの。
工事中しか見ることのできないレアキャラです。
これは電線共同溝の升。
地下に電線やインターネットケーブルなどをまとめて埋めるためのもの。
升と管路を作り、道路が完成したら各業者がケーブルを入れます。
側面にある4つの穴はケーブルを入れる管を通すもので、ケーブルの数で穴の数も変わってきます。
さらに進んでいくと削ったばかりの山肌が現れました。
上の2段は完成しているのですが、一番下のみ、法面工事の途中です。
今回の現場は法面が作られる工程も順を追って見ることができました。
(法面工事を詳しく知りたい方はこちら女子的土木散策レポート「法面工事の現場に潜入!」)
削られたままになっている面を触ってみるとザラザラしていて硬い。
土には大きな石もあり、隙間なくガッチリ詰まっている感じがします。
一見、このままでも大丈夫なように見えるのですが、雨が降ると土が削れてしまうため、次の工程で、表面にラスと呼ばれる金網を取り付けていきます。
真ん中には水路が作られています。
この水路があるおかげで水の通り道ができて法面が守られています。
次に、ラスを貼った直後の法面。
全面にラスが貼られています。
よく見ると、茶色のマットのようなものが貼り付けられている部分がありました。
これは、水が出る地盤のため、ヤシ繊維植生マットを敷くことで、水をマットに吸わせて流し、土の表面が削れてしまうのを防いでくれる役割があるそう。
触ってみると、ゴワゴワしていて結構硬いマットでした。
さらに周りには赤と青の謎の印がたくさん描かれています。
これは施工の範囲に印の数以上の杭を打たなければならないという規定数を表した印。
品質保持のため、県が立ち会って点検するためのもので、青は大きい杭、赤は小さい杭なんだそう。
杭に大小があるのは、ラスをしっかりと止めるために、大きい杭だけでは止まりきらないものもあるので、組み合わせて使う必要があります。
この長方形は“重ねしろ”の長さを表したもの。
こうした点検をしっかりすることで、私たちの安全は作られているんですね。
さらに上の方をみると、コンクリートで十字の形をしたものが見えます。
これはアンカー工という工法で、表面のゆるい土と、奥の硬い土を鉄の棒で縫い付けて固定しています。
地盤によって様々な工法があるんですね。
法面の上部から伸びているのは、法面工事をする人がぶら下がって作業するためのロープ。
鉄の棒を地中に埋めて支えにする場合が多いのですが、このように木が丈夫だと、木に巻きつけることもあるそうです。
法面の端っこにきました。
まるで巨大なピラミッドのよう。
約40度の斜面だそうで、横から見ると結構急なことがわかります。
法面工事をする人はこの斜面をロープ伝いに作業するなんて、本当にすごいと改めて感じました。
そしてついに法面完成形。
切り通しになっている部分は植物がいい感じに生えている法面になっています。
法面工事にはいろんな方法があります。
これは植生基材吹き付け工という方法。
地面がしっかりしているので、削った山肌にラスと呼ばれる金網を固定し、肥料や約5〜6種類の植物の種を混ぜた土を吹き付けています。
土のままだと、雨が当たると土が流れてしまうのですが、植物が生えると流れることがなくなり、強い法面が完成します。
でも工事中、少し困ったことが起きるとのこと。
それは山から鹿が出てきて種を食べてしまうそうなんです。
鹿も美味しい種が分かっているんですね。
ここは約半年前に法面工事が完了しているので、植物もいい感じに育ってきていて、自然に溶け込んでいます。
近づいてよーく見てみると中心にワイヤーが見えますが、遠くからだと、全く見えません。
ちなみに、ここはアスファルト舗装を待つのみの道。
まるで今にも車が走ってきそうな道です。
地面には先ほど見た、電線共同溝の升の蓋を発見。
蓋の部分の高さまでアスファルトが敷かれます。
この道が完成するにはあと数年かかるそうです。
今回は新たに道を造っている現場を取材しましたが、最近では、造る道路から守る道路へ変化してきています。
基本的にトンネルや橋梁は5年おきに目視調査と、叩いて大丈夫かどうかを確認する点検を行い、悪ければ必ず5年以内に直すことが義務付けられているそう。
舗装は痛んできたら直すようになっています。
今回取材して、設計者、実際に施工している人など、本当にたくさんの人たちの手によって作られているんだなと改めて知ることができました。
最後に土木事務所の方々とお話しさせていただく中で、自分たちの造ったものが後世に残り、人々の生活の支えになることを誇りに思っているとお聞きしました。
私たちは、完成したものしか見る機会がありませんが、道路には建設に携わった人たちの熱い想いも敷き詰められているんだなと感じました。
数年後に完成するこの道。
実際に車で走ることができる日を楽しみにしています。